消費者金融やカードキャッシングの過払い金。
これから相談しようとする人の中には、弁護士にしようか司法書士にしようか迷っている方もいらっしゃるかと思います。
司法書士には、過払い金の金額が140万円以上の案件を取り扱えないという金額面での限界があります。
さらに、司法書士には、裁判での代理権に限界があるってご存知でしたか?
裁判所には、最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所の4つの裁判所があります。
弁護士は、どの裁判所でも、ご本人様の代理人として、裁判所の期日に出廷することができます。
一方で、司法書士の場合、ご本人の代理権が認められているのは、簡易裁判所だけです(司法書士法3条1項6号、7号)。
地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所では、法務大臣認定司法司法書士であっても、代理権は認められていません。
簡易裁判所は、過払い金の金額が140万円未満の事件のみを取り扱う裁判所です。
司法書士は、過払い金の金額が140万円未満の場合に限って、法務大臣の認定を受ければ、裁判を起こしたり、相手方貸金業者と交渉をすることができます(司法書士法3条1項6号、7号)。
このため、簡易裁判所の裁判であれば、司法書士に頼んで、裁判を進めることができます。
過払い金の金額が140万未満でも注意が必要!
ただ、過払い金の金額が140万円未満の場合でも、注意が必要です。
司法書士には、簡易裁判所でしか代理権が認められていません(司法書士法3条1項6号、7号)。
過払い金の金額が140万円未満で、過払い金の返還を求める裁判を起こす場合、簡易裁判所に裁判を起こします。
裁判を起こした後で、判決が出るまでに、相手方貸金業者と話合いがまとまれば、そのまま司法書士で問題ありません。
ところが、相手方貸金業者と話がまとまらなかった場合、司法書士の代理権の限界が問題になってきます。
簡易裁判所で判決が出ても、相手方貸金業者がすんなり払ってこない可能性があります。
判決が出た後、その判決が不服だった場合、相手方貸金業者は、「控訴」という不服申し立てをすることができます。
判決に対して控訴がされると、最初に簡易裁判所で行われていた裁判は、簡易裁判所から地方裁判所に移って、地方裁判所で控訴審が開かれることになります。
司法書士には、簡易裁判所でしか代理権が認められていないので、裁判が控訴審まで進んで地方裁判所に移ってしまうと、司法書士は過払い金の裁判に対応することができなくなってしまうのです。
裁判が控訴審まで進んで、司法書士が裁判に対応できないとなると、ご本人様が地方裁判所に出向くか、慌ててそこから対応できる弁護士を探さないといけなくなります(当事務所では控訴審からのご依頼は受け付けておりません)。
これでは、過払い金が140万円未満だからと言って、安心して司法書士にお任せできないですよね。
控訴審を避けるため低い金額で和解を迫られるリスクも!
司法書士には簡易裁判所でしか代理権が認められていないということは、裁判が控訴審まで長引かなかった場合にも、影響を及ぼします。
司法書士が簡易裁判所でしか代理権が認められていないことについては、相手方貸金業者もよく知っています。
このため、相手方貸金業者が、わざと司法書士との間で和解に応じず、裁判を長引かせてくる可能性があります。
司法書士としては、自分たちに代理権が認められている簡易裁判所で裁判が開かれている間に話し合いをまとめたいと思うところ、相手方貸金業者が、逆に司法書士が控訴審に対応できないことを利用して、低い金額での和解を迫ってくるような戦略をとってくるリスクがあるのです。
司法書士の代理権をはがすために、わざと判決まで行って、その判決に不服申し立て(控訴)をすれば、司法書士は裁判に対応できなくなってしまいます。その弱点を、貸金業者側がついてくるリスクがあるのです。
過払い金は、請求すれば自動的に返金されるものではありません。過払い金の請求手続きは数多くの争点を争って、過払い金を取り戻す戦いです。
戦いを戦う以上は、代理権の有無といった弱点を相手方にさらけ出すのは、大きな足かせとなります。
このため、過払い金の金額が140万円未満の場合でも、過払い金をしっかり取り戻したいという方は、最初から弁護士に依頼した方が圧倒的に安心です。
以上、司法書士の代理権の限界について、参考にしていただければ幸いです。