原則・過払い金は取引終了から10年で時効

「過払い金、いつかは相談しようと思うけど」。

そんな風に思いながら、なかなか相談できていない方も多いのではないでしょうか?

過払い金は、いつまでも請求できるものではありません。

過払い金は、原則として、取引が終了してから10年で、時効となります。

たとえば、1996年8月28日から取引をスタートして、2019年5月15日に全て支払いを完了して、取引が終了した場合を例にご説明します。

この場合、取引の終了日は、2019年5月15日です。このため、ここから10年後の、2029年5月15日に、取引で発生した過払い金が時効となります。

これが、過払い金の時効の原則的な形です。

このため、支払いが完了している方の場合は、取引が終了した時期がとても大事です。

取引が終了してから10年が経過している場合は、いくら弁護士に依頼しても、過払い金が時効となってしまっているため、過払い金を取り戻すことは、法律的にできないのです。

取引期間を調べる方法

取引が始まった時期や終わった時期については、ご自分で調べることができます。

調べる方法については、こちらのページにまとめてありますので、ぜひご覧ください。

⇒ 取引期間を調べる方法

最近では、「過払い金の無料調査」などというCMがテレビでもラジオでもよく流れていますが、そんな事務所に依頼する必要はありません。

ご自身で取引履歴を取り寄せることができますので、ぜひ取り寄せてみてください。

クレジットカード・カード会社の場合の注意点

ここで、特に、カード会社・クレジットカードの場合の注意点です。クレジットカードの場合、キャッシング機能以外にもショッピング機能(お買い物の際の支払いなど)もついています。

「取引が終わってから10年」というと、「買い物でカードを使っていれば大丈夫」と勘違いされる方も多いようですが、これは間違っています。

クレジットカードの場合、お買い物の取引とお金を借りる取引は別の取引です。

また、お金を借りる取引でも、カードローン取引とカードキャッシング取引は別の取引です。

このため、対象となるキャッシング取引が終了していれば、たとえお買い物や公共料金などでクレジットカードを使っていても、キャッシング取引の終了から10年で過払い金は時効となってしまいますので、ご注意ください。

以上のご説明が、原則的な場合です。

ただ、過払い金は、取引が終わってから10年が経過していなくても、相手方貸金業者側の主張により、時効となってしまう例外的なケースもあります。

以下、過払い金の争点ともかかわることですが、順番にご説明します。

例外1・取引の分断(空白期間)がある場合

こちらも、具体例でご説明します。

取引が、

・1996年8月28日~2006年7月3日

・2008年10月13日~2019年5月15日

となっている場合です。

このケースでは、1996年8月28日に取引を開始し、2006年7月3日に一度全部支払いを完了しています。

そして、2年3か月ほど、借入れも返済もない期間(空白期間)があった後、2008年10月13日から借入れを再開し、2019年5月15日まで取引が続いたような場合です。

この場合、取引が最終的に終了したのは、2019年5月15日であることから、原則通り取引が終了してから10年で時効になるのであれば、2029年5月15日で取引全体の過払い金が時効となる計算になります。

ところが、問題になるのが、取引の途中の空白期間です。

2006年7月3日に一度残っている債務を全て支払ってしまっていて、2年3か月ほど借入れも返済もない空白期間があります。

こうした場合、貸金業者側は、「取引の分断」を主張してきます。

取引が、前半部分の取引と後半部分の取引の2つの取引に分かれるという主張です。

前半取引:1996年8月28日~2006年7月3日

後半取引:2008年10月13日~2019年5月15日

というのが貸金業者側の主張です。

この場合、過払い金の時効は、それぞれの取引ごと(前半取引と後半取引とそれぞれごと)に進行することになります。

前半部分の取引は、2006年7月3日に終わっているため、前半取引の過払い金は、2016年7月3日に時効となってしまっています。

後半取引は、2008年10月13日から始まっていますが、多くの消費者金融やカードキャッシングでは、2008年頃の契約では、もともと適法な金利での取引に切り替わっているため、後半部分の取引では、過払い金は出ない可能性が圧倒的に高いです。

そうすると、前半取引の過払い金はすでに時効となっていて、後半取引は過払い金が発生しない形となり、トータルで見ても、過払い金は0円となってしまいます。

取引が分かれるか否かの判断基準

このように、取引の間に空白期間がある場合、取引が全部で一つなのか、それとも前半取引と後半取引の2つに分かれるかというのは、いろんな要素で判断されます。

▼空白期間の長さがどれだけ長いのか

▼前半の取引の終了の際に基本契約が解約されているのか否か

▼後半取引開始の際に新たな基本契約が結ばれているか否か

▼取引に使っていたカードは同じカードか否か

▼借入れの際の利率は変わっているのか否か

などの要素で裁判所が最終的には判断することになります。

このように、取引期間の間に空白期間がある場合、たとえ最終取引日から10年が経過していなくても、取引が分かれてしまい、トータルで見ても過払い金が戻ってこなくなってしまうことがあります。

「自分はまだ返し終わって10年経っていないから」などと先延ばしにするのではなく、過払い金のご相談・ご依頼はお早めに進めてください。

 

例外2・取引の途中で「貸付停止」がある場合

次に説明するケースは、「貸付停止」という争点です。

貸付停止とは?

「貸付停止」は、それまで借りたり返したりすることができた取引が、取引の途中から、借入れができなくなって、返済だけになった場合に問題となる争点です。

こちらも具体例でご説明します。

1996年8月28日から借入れをはじめ、借りたり返したりを繰り返していたところ、2010年3月10日に新たな借り入れができなくなって、その後2019年5月15日まで返済を続けたような場合です。

このように、取引の途中で新たな借り入れができなくなり、返済だけの取引に変化することを、「貸付停止」と言います。

例えば、返済の遅れが続いた場合や収入を証明する源泉徴収票を提出しなかった場合、他社での借り入れが増えた場合などにこうした「貸付停止」の措置を貸金業者側がとるケースが多いです。

貸付停止がある場合の貸金業者側の主張

この「貸付停止」がある場合、貸金業者側は、新たな借入の発生が見込めなくなったので、過払い金の時効について、取引の終了から10年ではなく、引ごとに10年が経過したら、過払い金は時効にかかると主張してきます。

具体例の場合で、2021年2月2日に裁判を起こした場合、1996年8月28日から2011年2月1日までの取引で発生した過払い金は時効となり、2011年2月2日から2019年5月15日に払った分だけが過払い金として取り戻せることになることになるのです(細かい点ですが、裁判を起こす半年前から請求をしていた場合にはその分も含まれます)。

この「貸付停止」の争点については、現在、様々な貸金業者が主張をするようになりました。裁判所でも、貸金業者側の主張を認める裁判例もかなり多く出てきています。

途中から借りれなくなった方へ

この「貸付停止」が取引期間中にある方の場合は、取引ごとに10年経つと時効が来てしまいます。

過払い金を請求しようかどうしようか迷っている間に、取引期間中の過払い金がどんどん減っていってしまうのです。

取引の途中で、借入れができなくなって、返済のみになった方は、迷っている間に過払い金がどんどん減ってしまうリスクがあります。

「貸付停止」について、お心当たりのある方は、お早めに、弁護士にご相談・ご依頼ください。

 

例外3・1回払いのキャッシング取引の場合

例外の3つ目は、特に、クレジットカード会社から主張される争点です。

カードキャッシングの支払い方法は、翌月に一括して支払う「1回払い取引」と毎月定額の返済をしていく「リボ払い取引」の2つがあります。

このうち、「リボ払い取引」について、過払い金の時効は、取引終了時点から10年で時効となるという点については、争いはありません。

一方で、「1回払い取引」については、カード会社側が、過払い金の時効について争ってくるケースが非常に多くあります

カード会社側は、「1回取引の場合、借入れと返済が、個別対応関係にあるため、1回払いの取引の場合は、リボ払いの場合とは異なり、取引ごとに10年経過したら、過払い金は時効である」と主張してくるのです。

この争点についてのカード会社側の主張が認められると、過払い金は戻ってこないことになります。

すなわち、カード会社各社は、ほとんどが2007年、遅くとも2010年までには、キャッシング1回払いの利率を適法な金利に引き下げています。

取引ごとに10年が経過すると過払い金は時効であると考えると、10年以上前の違法金利の取引について発生した過払い金は、すでに取引から10年が経過しているため、過払い金は時効となります。

そして、10年以内の取引については、すでに借入れの利率が適法な金利に下がった後の取引のため、過払い金は発生しないのです。

このように、キャッシング取引の1回払いについては、カード会社側が、時効の主張をしてくる可能性がある点については、注意が必要です。

 

過払い金の時効についての注意点!

無料診断や無料調査では時効は止まりません!

過払い金の時効は、裁判上の請求をすることにより、時効の完成が猶予されます(改正民法147条1項1号)。

ここで注意が必要なのが、最近よく見たり聞いたりする、過払い金の無料調査や無料診断です。

過払い金の無料調査や無料診断は、CMを大量に流す全国チェーンの事務所が手掛けているもので、「とりあえず調べてもらおう」と利用される方も多くいらっしゃるかと思います。

ところが、この過払い金の無料調査や無料診断は、あくまでも「調査」をすることが目的なので、過払い金の無料調査や無料診断をしても、時効の完成が猶予されることはありません

このため、期限ぎりぎりで無料調査をしてもらっても、実際の請求手続きに移らない限りは、過払い金が時効にかかってしまうリスクがあるのです。

過払い金の無料調査や無料診断は、時間がかかるだけで、あまりメリットのあるものではありません。単に全国チェーンの事務所の集客手段にすぎないのです。

このため、「10年ギリギリかもな」と思っている方は、無料調査や無料診断などの無駄な手続きに時間をかけるのではなく、すぐに、過払い金の請求手続きを専門家に依頼した方が安全です。

過払い金の無料調査や無料診断はお勧めできません!

過払い金の時効まとめ

以上のとおり、過払い金には、期限があります。

原則的には、取引が終了してから10年となりますが、例外的に、様々な争点があるため、取引終了から10年が経過していなくても、過払い金の一部または全部が時効となってしまうケースもあります。

名古屋駅の弁護士・片山総合法律事務所でも、これまでご依頼頂いた方の中で、過払い金が時効となってしまっていた方がたくさんいらっしゃいます。

「あと1週間早くご依頼頂いていれば」という方もいらっしゃいました。

「10年」と聞くと、とても長い期間のように感じるため、「過払い金の相談はまだ先で良いか」と思われる方が多いのかもしれませんが、様々な争点のことを考えると、ご相談・ご依頼は1日でも早い方が安全です。

名古屋駅の弁護士・片山総合法律事務所では、10年ギリギリの案件についても、ご相談・ご依頼を受け付けていますので、心当たりのある方は、お早めにご相談ください。