過払い金返還請求の時効・期限

原則・取引終了から10年で過払い金は時効

過払い金は、いつまでも請求できるものではありません。

原則として、取引が終了してから10年で、過払い金は時効になります。

例えば、2000年4月3日に取引が始まって、2020年8月5日に完済して取引が終了した方の場合、2020年8月5日から10年が経過する2030年8月5日に、過払い金は時効となります。

「取引が終了してから10年」というと、結構長いように感じるかもしれませんが、10年なんてあっという間です。

これまでも、「5,6年前に返し終わったかな」とご相談時におっしゃっていた方の取引履歴を取り寄せてみると、10数年前にすでに完済済みであったケースなどがたくさんあります。

返し終わった時期を完全に忘れてしまった方は、取引履歴を取り寄せてみると取引の期間がわかります。

取引履歴は、ご本人から要請があったら、貸金業者は法律上開示しないといけないものです。取引履歴を取り寄せることでリスクやデメリットはありません。

「いつ返したかな?」という疑問が原因で、過払い金請求を先延ばししている方は、まずは、取引履歴を取り寄せることから始めてみてはいかがでしょうか?

例外1・取引に空白期間がある場合

取引の最初から最後まで、残高のある状態で、借りたり返したりを繰り返した方は問題となりませんが、取引の途中でいったん全部支払いを終えて、借入のない期間が空いた後、再度借りた方は注意が必要です。

たとえば、2000年4月3日に取引を開始して、2006年10月18日に一度完済して、その後2008年8月1日から取引を再開して、最終的に2020年8月5日に支払いを完了したようなケースです。

このように、取引の途中で空白期間がある場合、貸金業者側は、取引が前半と後半とに分かれると主張してきます。2006年10月18日に一度完済したまでが前半の取引で、2008年8月1日以降の取引が後半の取引であるという主張です。

この場合、取引は1つではなく、2つになります。このため、前半の取引が終了した2006年10月18日から10年が経過した2016年10月18日で、前半の取引の過払い金は時効になるというのが貸金業者の主張です。

そして、後半の取引は、2008年8月1日から始まっていますが、後半の取引の内容によっては、もともと適法な金利での借入れとなるため、トータルで過払い金は0円という主張をしてくるのです。

取引が2つに分かれるか1つなのかは、空白期間の長さや契約が同じかどうか、利率が変わっているかやカードの失効手続きが取られているか否かなどの要素をもとに、最終的には裁判所が判断することになります。

このように、取引の途中に空白期間がある方については、最終的に取引が終了した2020年8月5日から10年ではなく、取引の途中に完済した時期から10年で、そこまでの取引の過払い金が時効にかかってしまう可能性があります。

取引の途中で一度全額返済したという方は、1日も早くご相談ください。

例外2・取引の途中で「貸付停止」がされた場合

「貸付停止」とは、取引の途中で、新たな借り入れができなくなり、返済だけとなるケースです。他の会社で借入れが増えたり、返済に遅れが続いたなどの理由で、貸金業者側が新たな借り入れをストップする措置です。

この「貸付停止」がなされた場合、貸金業者側は、新たな借り入れが見込めなくなった以上は、その時点から過払い金の時効が進行するという主張をしてきます。

この「貸付停止」の措置がなされた場合、貸金業者側は、取引ごとに10年が経過したら過払い金は時効となるという主張をしてきます。

たとえば、2021年2月3日に過払い金の裁判を起こした場合、そこから10年以上前の2011年2月2日以前に支払った過払い金については、取引が終了してから10年が経過しているので、時効になるというのが貸金業者側の主張です。

この「貸付停止」の争点については、最高裁判所の判例は出ていません。下級審では、判決が分かれている争点です。

取引の途中で新たな借り入れができなくなったという方は、返済の途中でも構いません。1日でも早く、過払い金のご相談・ご依頼にお越しください。

例外3・1回払い取引のケース

こちらは、カード会社のキャッシング取引でよくあるケースです。

カード会社のキャッシング取引には、毎月定額で支払いをする「リボ払い取引」と毎月の利用分を翌月にまとめて支払う「1回払い取引」の2つがあります。

このうち、「リボ払い取引」の場合は、原則通り、取引が終了してから10年で過払い金は時効となります。

一方で、「1回払いのキャッシング取引」については、カード会社側が取引ごとに10年が経過したら、過払い金は時効であると主張してきます

カード会社側は、「リボ払いは、借入れ全体に対する返済であるが、1回払いは利用した分に対する支払なので、リボ払いとは違い、取引ごとに対応関係がはっきりしている」として、取引ごとに10年が経過すると、過払い金は時効になると主張してくるのです。

この争点は、貸金業者側にとてもメリットが大きい争点です。

カードキャッシング取引は、だいたい2007年(平成19年)には、利率が、利息制限法の範囲内に下がっています。

このため、この争点についてのカード会社側の主張が認められると、発生していた過払い金はすべて時効となり、10年以内の取引は全て適法な金利での借入れのため、トータルとしてみても、過払い金は0円となるのです。

この「1回払い取引」の争点についても、最高裁の判例は出ていません。下級審の裁判例では、判断が分かれています。

この「1回払い取引」については、過払い金請求の経験豊富な弁護士にご依頼する必要がありますので、注意が必要です。

過払い金の時効まとめ

過払い金は、原則として、取引が終了してから10年で時効となります。

一方で、取引に空白期間がある場合や貸付停止の措置がなされた場合、1回払い取引の場合など、例外的に、取引が終了してから10年を待たずして過払い金が時効となるケースあります。

いずれにしましても、過払い金の相談・依頼を先延ばししてもいいことはありません。

気になっている方は、お早めにご相談ください。

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